2022年11月時点、世界経済は歴史的なインフレの影響を受けて、大きな転換期を迎えています。インフレは経済にとって良い事のなのか?または悪い事なのか? 今回は現代の日本に与えるインフレの影響について解説していきます。
インフレとは?
インフレの意味
インフレとは正規名称インフレーション(英語:inflation)の事を指し、モノやサービスの価格が一定期間継続して上昇していく事を言います。今まで買えていたモノが、同じ金額で購入出来なくなる訳ですから、お金の価値が下がる事になります。
インフレの例
2022年は世界中でインフレが起きておりますが、日本も例外ではなく、モノやサービスの価格が5%~20%値上げしています。
コカ・コーラ(500ml):144円 → 166円
※約15%の値上げ
ハンバーガー(マクドナルド):130円 → 150円
※約15%の値上げ
牛丼 並盛(吉野家):426円 → 448円
※約5%の値上げ
ディズニーランド:8,700円 → 9,400円
※約8%の値上げ
iPhone13 Pro Max:156,995円 → 186,190円
※約18%の値上げ
私がお昼に買っていた500円のお弁当も550円になりました。。。
給与は変わっていないのに。。。
2022年、日本で起きているインフレは、経済成長により需要が供給を上回る事で起きている訳ではなく、ロシア・ウクライナ問題による資源価格高騰による要因が大半の為、あまりいいインフレとは言えないですね。
ハイパーインフレーション
ハイパーという事は凄いインフレって事ですか?
その通りです。
例えばマクドナルドのハンバーガーが1万円、ディズニーランドの入園料が100万円など、現実では考えらない物価高の事を言います。
2018年 ベネズエラのインフレ率
100万%超
インフレ率100万%超。。。
2018年、ベネズエラでは原油生産減少に伴う財政悪化と、政府による急激な通貨供給量の拡大によってハイパーインフレが起き、ベネズエラの通貨ボリバルの価値は大幅に下落し、何かモノを買う為に大量の札束が必要になる状態に陥りました。
デフレの意味
デフレとは正規名称デフレーション(英語:deflation)の事を指し、モノやサービスの価格が一定期間継続して下がっていく事を言います。つまりインフレと対照的にお金の価値が上がるという事になります。
デフレの例
私が社会人1年目(2000年)の吉野家の牛丼は400円でしたが、3年目(2002年)に差し掛かるころに280円になりました。同じ味で同じ量の牛丼なのに、支払うお金が少なく済むようになったわけです。
なぜ牛丼の値段が下がったのですか?
基本的に価格は需要と供給のバランスで決まります。牛丼を食べる人が減れば価格は下がり、食べる人が増えれば価格が上がります。
2002年で起きた値下げは、この需要と供給のバランスに加えて、供給コストが抑えられたことによって起きたと考えられます。
デフレスパイラル
デフレスパイラルとは何ですか?
①モノが売れない
②企業は物が売れるように値下げ
③商品が売れても利益が減少するので社員の給与を減らしたりボーナスカットをする
④収入が落ち込んだ人は、物やサービスの消費を控える
人が物やサービスの消費を控え、経済がどんどん縮小していく事をデフレスパイラルと言います。
インフレとデフレの違い
インフレ
モノやサービスの価格が上がり、お金の価値が下がる
デフレ
モノやサービスの価格が下がり、お金の価値が上がる
インフレになる原因
- 継続した経済成長
- 政府による量的緩和政策でお金の流通量が増える
- 消費者の需要が強い
- 資源価格の高騰
インフレになるとどうなるの?
モノやサービスの消費が経済成長の要因になる現代において、緩やかなインフレは物価の安定に必要と考えられ、アメリカを始めとした主要先進国や日本は2%の物価上昇率を目指した政策運営を行っております。
つまりインフレになる事は、良い事って事ですね!?
経済成長による緩やかなインフレであれば良いのですが、今世界中で起きているインフレは、経済成長による緩やかなインフレとは程遠く、コロナ対策で行った異次元の量的緩和政策の副作用とウクライナとロシアの戦争による資源高を要因としたインフレで、決して良いインフレとは言えません。※2022年11月時点
円安になる
最近毎日のように「何十年ぶりの歴史的円安!」みたいなニュースを見かけますが、なぜインフレになると円安になるのですか?
2022年11月時点で起きている円安は「アメリカで起きているインフレ」が影響しています。アメリカでは政府が望む緩やかなインフレとは程遠い急激なインフレが起きており、政府はこのインフレを抑える為に、お金の流通量を抑える事を目的とした利上げを行いました。その結果、アメリカの長期金利(10年物国債)が上がり、世界中のお金がアメリカに集まりました。
- アメリカの長期金利:4.128%※2022年11月9日時点
- 日本の長期金利:0.251%※2022年11月9日時点
こうなると、金利の低い日本の国債(円)を保有するより、金利の高いアメリカの国債(ドル)を持っていた方が、高い金利の恩恵が受けれることから、日本の国債(円)が売られ、アメリカの国債(ドル)が買われるので、物凄い円安・ドル高になったわけです。
金利が上がる
なぜインフレになると金利が上がるんですか?
金利のコントロールは中央銀行(アメリカの場合はFRB、日本の場合は日本銀行)が行います。
- 急激なインフレが起きる
- 中央銀行が政策金利を引き上げる
- 金利が上がったので企業や個人はお金を借りない
- お金がないので、モノやサービスの消費が少なくなる
- モノやサービスの消費してほしいので値段を下げる
このように人為的にインフレを抑える為に金利を引き上げます。
2022年11月9日時点で、アメリカは物凄い利上げをしているのに対して、日本は利上げをしていません。これはどうしてですか?
急激な利上げをすると、副作用としてリセッション(景気後退)が起きます。日本のインフレは需要高によるインフレではなく、資源価格の高騰、円安による外的要因が大きいので、日本銀行の黒田総裁の判断は、今の日本は利上げの副作用に耐えられる経済状況ではないとして、利上げを見送っています。
資産が目減りする
モノやサービスの値段が上がる=お金の価値が下がる
資産が目減りしないようにする為にはどうすれば良いですか?
難しい質問ですね~
・緩やかなインフレの場合
株式や投資信託(経済成長と共に価格上昇する為)
・急激なインフレの場合
金・不動産・ロレックス(量が決まっている為)
2022年はどうなっている?(日本とアメリカ)
日本とアメリカの金融政策は真逆
日本
先進国で唯一、利上げをせず金融量的緩和政策を維持。
結果→歴史的な円安を引き起こす
※年初来約30%の上昇
ドル/円:1ドル=115円(2022年1月1日)
ドル/円:1ドル=150円(2022年10月20日)
アメリカ
先進国で最も急激な利上げをしている。
結果→歴史的な株安を引き起こす
※年初来約22%の下落
ダウ平均:36,799㌦(2022年1月4日)
ダウ平均:28,725㌦(2022年9月30日)
なぜインフレになるとよくない?
世界的なインフレで騒がれていますが、なぜインフレになるといけないのですか?
良いインフレ=経済成長に伴う緩やかなインフレ
悪いインフレ=経済とは関係のない理由で起こるインフレ
資本主義経済の中でインフレは必要とされています。つまり、インフレになることが悪いわけではありません。問題になるのは、経済とは関係ない理由で起こるインフレや急激なインフレです。
インフレとデフレどちらがいいの?
緩やかなインフレが望ましいって事だから、デフレよりインフレの方が良いんですよね?
経済が成長していく事で、緩やかに起きるインフレが最も望ましいと言われれおりますが、今先進国の中央銀行ではインフレを抑制しようとしているわけですから、インフレよりもデフレを望む状態です。つまり、インフレとデフレのどちらが良いのか?という答えに対しては、その時の状況によって変わると思います。
インフレ対策は何をすればいいの?
モノやサービスの値段が上がる=お金の価値が下がる
私の貯金している金額は変わらないのに、今までと同じ金額で同じモノが買えない。
元本が保証される貯金が一番安全だと思っていたのに(><)
貯金で元本保証されるのは数字であり、価値ではありません。
インフレに強い資産:有形資産
インフレ時に価値の下落を防げる資産を教えてください!
これまた難しい質問ですね!
インフレ初期~終期で変わりますが一般論でいくつか挙げてみましょう。
外貨(ドル)
2022年に起きているような、ドルだけが突出して高くなるような「ドル独歩高」時は、外貨(ドル)を持つ事で資産の価値を守る事が出来ます。ただ、今のような極端なドル高円安時に慌てて外貨を購入しても遅いです。ドルは世界で流通している通貨の量としては一番多いわけですから、普段からポートフォリオの中に一定量ドル資産を入れておく事で、インフレ対策が出来ると言えます。
株式
経済成長に伴うインフレ下では、モノやサービスの価格上昇と共に企業の収益もあがり、株価上昇につながる事から、株式は一般的にインフレに強い資産と言われております。しかし、インフレが起き価値が下落した現金で、価格が上がった株を購入してもインフレ対策にはなりません。急激な経済状況の中ではなく、普段からポートフォリオの中に一定量の成長株式を入れる事で、インフレ対策が出来ると言えます。
金
現物資産の代表格である金は、天然資源の為、過去~未来と採掘出来る量が決まっていると言われています。※約233,600㌧(50mプール約4.9杯) 量が決まっているという事は供給量が確定している訳なので、インフレ時に最も強い「守りの資産」と言えます。1978年7月に平均価格1トロイオンス約193㌦で取引されていましたが、2022年7月の平均取引価格は1トロイオンス約1,736㌦と44年間で約9倍価格が上昇しており、世界中で需要があり、不変の物質であり、どの時代、どの場所でも重要があることから最強の守り資産と言えます。
不動産
現物資産である不動産はインフレに強く、景気に左右されない性質を持ちます。投資対象として不動産を所有している場合は売買によって得るキャピタルゲイン(売買益)と、保有している事で得られるインカムゲイン(賃料収入)があります。東京23区でみると、売買価格は景気の影響を受けて価格が変動する事がありますが、賃料は、景気によって家賃が激しく変動する事がないので、景気の影響を大きく受けることなく安定的に収入を得る事が出来ます。東京23区というエリア限定で考えると、経済状況が反映されるキャピタルゲインと、経済状況があまり反映されないインカムゲイン両方の性質をもったハイブリッド型で、インフレ下でもデフレ下でも大きな影響をうけない安定した資産といえるのではないでしょうか。
美術品・骨董品・貴金属
存在する量が一定しているモノは現物資産としてインフレ下でも強さを発揮します。
- 有名な絵画
- アンティークコイン
- ロレックスなどの高級時計
ロレックスのアンティークウオッチとして人気のサブマリーナ(Ref.5513)は、この20年間で10倍近い値上がりをしており、現代において高級時計は目減りしない資産としてインフレに強い資産と言えます。
インフレに弱い資産:安全資産
私が持っている資産はインフレに弱い(><)
インフレに弱い資産を教えてください(ꐦ°᷄д°᷅)
怒ってますか(・∀・)??
日本はこの30年間デフレ下にあった為、インフレに強い資産を持つ必要がありませんでした。よって、多くの人はデフレに強く、インフレに弱い資産を保有していると考えられます。
現金
現金=増える事もなければ減る事もない安全な資産
多くの方はこのような解釈をされていると思いますが、これは数字(金額)に対してであり、価値ではありません。現金はデフレ下では価値が上がり強い資産になりますが、インフレ下では価値の下落につながり、弱い資産になります。
債券
インフレ率に負けないリターンで運用しなければ、価値の下落につながります。一般的にインフレ下では債券のリターンは低くなり、株式のリターンが大きくなると言われております。
日本国債10年の年利回り0.251%※2022年11月9日時点 < 2022年日本のインフレ率1.9% ※IMFによる2022年10月時点の推計
米国国債10年の年利回り4.128%※2022年11月9日時点 < 2022年米国のインフレ率8.05% ※IMFによる2022年10月時点の推計
生命保険の積立
貯金よりかはいい
普通預金にどれだけ長期間預けていてもお金は増えないけど、生命保険(終身保険・養老保険・個人年金保険)で積立てすれば、貯金よりも大きなリターンが得られると言う事で、日本では多くの方が生命保険による積立てをしておりますが、変額保険を除く一般的な生命保険商品は契約者からお預かりした保険料を国債で運用してきました。つまりインフレ下では、インフレ率を超えるリターンを得る事が難しいと言われております。
年金
私達の公的年金は国内外の債券と株式でバランスよく運用されており、2001年度~2022年度第2四半期までは年率3.47%で運用され、現在のインフレ率に負けない運用がされていますが、2019年、2020年と2年連続で年金額の上昇率が、インフレ率より抑制されるマクロ経済スライドが発動されました。※マクロ経済スライドが発動されるという事はもらう年金の価値が減ることを指します。
生命保険の積立は危険、資産の見直しが必要
私の積立ての大部分は生命保険なんですよね。。。
直ぐにやめた方が良いですか!?
いやいや!
加入時期、払込期間、保険商品によって対策の方法は変わります。
現在加入中の保険契約については、継続、払済、減額、解約と様々な角度から有効な手段を選択する必要があります。
ただ個人的に、生命保険で将来のお金を積立てするのであれば変額保険一択です。
関連記事:【わかりやすく解説】変額保険とは?「やめたほうがいい」「いらない」と言われてしまうトラブルやデメリットなど、まとめました!
関連記事:変額保険はやめたほうがいい?デメリットや向いている人は?投資信託とどっちが儲かるの?
物価上昇からお金の価値を守るために
- 物価上昇率に負けない運用をする
- お金をモノ(現物資産)に変える
- 自己投資して自分の能力を高める
まとめ
資本主義が継続する限り、経済成長と共にインフレしていく
現代、世界ではより多くのモノを作り、より多くのサービスを、より多くの人に消費してもらう事で経済を成長させています。
この消費経済の構造が崩れない限り、インフレは続くと考えらます。
お金というものは、モノやサービスの対価として使用する為に人間によって作られた価値尺度であり、政府によって増やすことも減らす事も出来ます。
地球という限られた空間の中にある資源は、物質的な量が決まっており、人口増加が止まらなければ枯渇し、過度な利用はオゾン層破壊などの環境汚染を引き起こします。
インフレに負けない運用をする事も大切ですが、私達一人一人が本当に必要なものを見極めて、必要なものを必要な分だけ消費するマインドを持つことが大切だと考えられます。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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